禁煙外来とは

禁煙外来イメージ

禁煙は、最も確実かつ短期的に重篤な病気や死亡を減らすことのできる方法です。
禁煙治療の有効性は十分な科学的根拠があり、日本では2006年度から健康保険が適用されるようになりました。
喫煙を単なる「習慣」ではなく、ニコチン依存症と診断し「病気」と捉えることで、医学治療により禁煙達成を目指していくのが禁煙外来です。

喫煙習慣の本質は
ニコチン依存症

タバコを吸うと、ニコチンが数秒で脳に達し、ドパミンが放出されます。
このドパミンの作用によって、タバコによる快感を味わうのです。
時間とともにニコチンが分解されて少なくなると、ドパミンも減少してしまい、それを補うために喫煙者は次のタバコを吸って快感が続くように行動するのです。
次第に、1本吸っても次の1本が欲しくなるという悪循環から抜けられなくなります。
これが喫煙の本質、すなわちニコチン依存症です。
タバコを吸うと、ニコチン不足によるイライラや不安感などの不快な症状が消えるため、吸っている本人は、まるでタバコが本来のストレスを解消したと錯覚してしまうのです。
本人の意志の力だけで長期間の禁煙ができる喫煙者は、ごくわずかであることが明らかとなっています。

喫煙による健康被害

喫煙によって、健康寿命は10年短くなり、寿命は7年短くなるとされています。
肺がんだけでなく、喉頭がん、食道がん、口腔がんなど様々ながんのリスクになります。
その他、高血圧糖尿病といった生活習慣病、脳卒中や心筋梗塞など動脈硬化性疾患の発症リスクが高まります。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は喫煙が最大の発症原因となります。
不妊症や妊娠中の胎児発育障害、うつ病や認知症、歯周病の発症も増えることが知られています。
他にも、顔色が悪くなる、皮膚の健康が失われ化粧ノリが悪くなる、声が低くしわがれた「スモーカーズ・ボイス」になるといった変化が現れます。
また、自分だけではなく、受動喫煙によって周囲の人にも健康被害を及ぼします。

禁煙治療の対象となる
患者様について

以下の条件全てに該当し、医師がニコチン依存症の管理が必要と判断した方が対象となります。

  • ニコチン依存症のスクリーニングテスト(TDS)で、ニコチン依存症と診断された方
  • 35歳以上の場合、ブリンクマン指数(=1日に喫煙本数×喫煙年数)が200以上の方
  • 直ちに禁煙を希望し、禁煙治療について説明を受け、文書で同意している方

なお、2016年に対象が拡大され、35歳未満の方に対しては、喫煙本数や喫煙年数によらず保険適用となりました。
また2020年度からは、加熱式タバコ使用者も健康保険による禁煙治療の対象として認められています。

標準禁煙治療プログラム

標準的な禁煙治療プログラムは、12週間に渡り計5回の禁煙治療を行います。
まず、初回診察で患者様と相談のうえ、禁煙開始日を決定します。
初回診察から2週間後、4週間後、8週間後、12週間後の計4回、禁煙継続のための治療を行います。
2回目~4回目の受診(再診1~3)は、オンライン診療で行うことも可能です。

標準禁煙治療プログラムイメージ

禁煙外来で処方できる禁煙補助薬は、貼付薬であるニコチンパッチ(ニコチネルTTS)と、内服薬であるバレニクリン(チャンピックス)があります。
チャンピックスについては、2021年6月より出荷停止の状況が続いているため、現時点ではニコチネルTTSのみ処方可能となっています。
その他、薬局薬店で購入可能な一般用禁煙補助薬として、ニコチン貼付剤(ニコチネルパッチ)や、ニコチンガム製剤(ニコレット)もあります。

ニコチンパッチ(ニコチネルTTS)

ニコチンパッチとは

ニコチンを含んだ貼付薬で、放出されるニコチンが皮膚から緩徐に吸収されることで、禁煙時の離脱症状が緩和されます。
禁煙開始日から使用を開始し、8週間の使用期間を目安に、サイズの大きいものから小さいものに切り替えて使用していくことになります。
具体的には、ニコチネルTTS30(ニコチン放出量21mg/日)を4週間→ニコチネルTTS20(ニコチン放出量14mg/日)を2週間→ニコチネルTTS10(ニコチン放出量7mg/日)を2週間という流れです。
1日1回朝に、上腕部・腹部・腰背部などに貼付し、次の日の朝に貼り替えるのが原則となります。
不眠や皮膚炎等の副作用が強い場合には、就寝前にはがす方法も考慮します。
皮膚症状はニコチンの刺激によるものなので、毎日貼る場所を変えるように注意しましょう。
ニコチン過量症状(頭痛、めまい、嘔気、嘔吐、動悸、冷汗など)が出る場合もあるため、その際はすぐにニコチンパッチをはがすようにしてください。
妊婦や授乳婦、冠動脈疾患の急性期や治療直後の方などは使用することができません。