心不全とは

心不全イメージ

何らかの心臓の病気が原因で、心臓のポンプ機能が低下してしまうことで、息切れやむくみが起こり、だんだんと悪化して生命を縮めてしまう病気です。
心臓は胸の真ん中にあり、ポンプのように収縮と拡張を繰り返しながら全身に絶えず血液を送っています。
生命活動を維持するうえで極めて重要な役割を担っている臓器だと言えます。
このポンプ機能が低下してしまうと、肺や体のあちこちにうっ血を生じて余分な水分が貯まってしまい、腎臓や肝臓など他の臓器へも悪影響を来してしまう、これが心不全というわけです。
従来は、急速なポンプ機能破綻によって症状が急性に出現する「急性心不全」と、慢性的なポンプ失調によって日常生活に支障をきたす「慢性心不全」を区別していました。
現在では、症状が出る前からの早期治療の有用性が確認されたこともあり、急性・慢性に分類する重要性は薄くなってきています。

高齢化の進む日本では、心不全患者数が急速に増えており、“心不全パンデミック”とも称される時代に突入しています。
心不全は、生命を縮めるだけでなく、生活の質を大きく損なう病気です。
いったん発症すると、入退院を繰り返しながら徐々に状態が悪化していくという経過をたどることが知られており、近年では発症前からの予防を含めた介入の重要性が強調されるようになってきました。

心不全は、その原因によって治療法も異なるため、原因疾患が何かをつきとめることも極めて重要です。
代表的な原因としては、心筋梗塞や狭心症といった虚血性心疾患、心筋症、弁膜症不整脈高血圧、先天性心疾患などが挙げられます。

検査について

心不全の診断は、問診や身体診察に加え、まず胸部X線撮影、心電図を検討します。
さらに血液検査でBNP値/NT-proBNP値というバイオマーカーを測定することで、心臓にどれだけ負担がかかっているかを知ることができます。
これらの検査で心不全が疑われた場合には、心臓超音波検査を実施し、心臓の動きをリアルタイムに観察することで心機能を評価します。
心機能の評価は、その後の治療方針決定にも大きく関わる重要な項目です。
当院では、これらの検査全てに対応が可能です。
場合によって、CT・MRI・核医学検査・心臓カテーテル検査など、さらなる精密検査が必要なケースもありますので、その際は当院と連携している総合病院をご紹介いたします。

治療について

心不全の治療は、薬物治療と非薬物治療に分類できますが、どちらも近年の進歩には目覚ましいものがあります。
非薬物治療においては、運動療法の重要性がこれまで以上に強調されるようになった他、植込み型除細動器や心臓再同期療法と呼ばれるデバイス治療(ICD/CRT)、さらに経皮的僧帽弁接合不全修復術(MitraClip)という新たな治療も登場しています。
クリニックにおいては薬物治療が中心となりますが、こちらも従来の3剤併用療法(ACE阻害薬/ARB+β遮断薬+MRA)から、“Fantastic Four”と称される4剤併用療法(ACE阻害薬/ARB/ARNI+β遮断薬+MRA+SGLT2阻害薬)への移行が示されるようになってきています。
心不全の病態形成には、レニン・アンジオテンシン・アルドステン系という血圧・体液量を調節するホルモン機構の活性化が大きく関わっています。
これをコントロールしてあげるのがACE阻害薬/ARBで、長らく心不全に対する薬物治療の中心的役割を担ってきました。
新たに加わったARNI(angiotensin receptor neprilysin inhibitor)は、このARBに心臓保護因子を強めてあげる成分サクビトリルを加えた合剤で、より高い効果が期待されています(商品名:エンレスト®)。
4剤目として登場したSGLT2阻害薬は、もともとは糖尿病治療薬です。
2つの大規模臨床試験、DAPA-HF試験とEMPEROR-Reduced試験によって、糖尿病の有無に関わらず心機能が低下した心不全の予後を改善することが示されており、2021年のEMPEROR-Preserved試験では、心機能が保たれている心不全への有効性も示唆されています(商品名:フォシーガ®、ジャディアンス®)。
さらに、“Fantastic Four”との併用薬として、心収縮力や血圧を低下させることなる心拍数のみを低下させるイバブラジン(商品名:コララン®)、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激という全く新しい作用機序に基づく治療薬であるベルイシグアト(商品名:ベリキューボ®)など、治療選択肢はどんどん拡がっています。

当院は、『心不全を発症させない!悪化させない!』を目標に、最新のガイドラインやエビデンスに基づいた治療を、それぞれの患者様の病態に合わせオーダーメイドで提供してまいります。